ジュネーブ諸条約70周年記念シンポジウム:「人道への挑戦」~自律型兵器の発展と人間による制御

inclusiveness
Sep 7, 2019 東京大学駒場キャンパス

スイスには、長い人道主義の伝統があります。その顕著な例が、1949年のジュネーブ諸条約の採択時にスイスが果たしたスイスの重要な役割です。以来、いかなる状況下でも国際人道法を遵守し、促進することは、スイスの外交政策上の優先事項となっています。条約により武力紛争で多くの命が救われましたが、条約の遵守を確立することは、依然として複雑かつ長期的な課題です。今年、ジュネーブ条約の70周年を記念して、在日スイス大使館は人道的価値とその関与を促進するためのさまざまなイニシアチブと活動を支援しています。赤十字国際委員会(ICRC)、国際人道法・人権法の研究に取り組む東京大学大学院「人間の安全保障」プログラム(HSP)及び、エセックス大学人権センターが開催する本シンポジウムはこの一つです。

ICRCは、武力紛争およびその他暴力の伴う事態によって犠牲を強いられる人々の人道的保護と援助を提供する、中立かつ独立した組織です。国際人道法・人権法の研究に取り組む東京大学大学院「人間の安全保障」プログラム(HSP)及びエセックス大学の人権センターは、国際人道法の学術研究に貢献しています。ジュネーブ諸条約70周年を記念し、この3つの機関は、国際人道法に対する現在の課題を認識し、法へのより良い遵守を確立するため、協力方法を議論するための場を設けるシンポジウムを共同開催します。シンポジウムは、エセックス大学のノアム・ルーベル教授による基調講演から始まり、国際人道法における課題について議論しました。基調講演に続いて、自律型兵器システムに焦点を当てたパネルディスカッションが行われました。

自律型兵器システムの問題は、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みの中で議論されています。日本においても、自律型致死兵器システム(LAWS)に関する有識者との意見交換会を外務省が開催するなど、人間による制御の有無をめぐって、さまざまな見解が示されています。日本とICRCはどちらも、自律型兵器システムに対する人間による制御を要求しています。しかし、自律型兵器システムの開発、導入、運用といった異なる段階でさまざまな形をとることができるため、これが具体的に何を意味するのかはまだ不明です。パネルディスカッションでは、自律型兵器システムの異なる段階において、人間による制御がどこまで可能かといった技術的な質問に対し、主に法的観点から焦点を当てるとともに技術的な視点も取り入れながら、問題に対する理解を深める活発な議論が繰り広げられました。